2021〜2023年度長野県地域発元気づくり支援金活用事業
学びの着眼点
「見える風景」・「見えない風景」という考え方
目の前に見える見所や案内したい素材は実在するもの【見える風景】ですが、ここに至るまでの経過や背景【見えない風景】があるからこそ生まれてきたものです。この両者の相互関係をとらえながら探究を深めるポイントを探ります。
「見えない風景」には、見えているが気づかない「見えていない風景」もあります。「見えない風景」は、時間的なものと空間的なものとに分けられます。空間的に「見えない風景」には、違う場所にある風景や基盤となる地理的な風景も含まれます。
見える風景に至るまでの
様々な要素の積み重ねと時間軸
「見える風景」と「見えない風景」は、必ずしも順番で見えるものが並んでくれているわけではありません。場所や条件によって様々な展開が考えられますので、時間的な関係を見抜く必要があります。また、目の前に見えるものは人の営み・文化・自然環境が、さまざまな時間の幅の中で相互に関わりあうのなかで形成されてきているものです。こうした関係に気づくきっかけをつくるのが「ふるさと探究」の重要な役割の一つです。
- 暮らしを育む人の営み・実り 「人的な物語」
- 暮らしを豊かにする文化・伝統 「歴史的な物語」
- 暮らしを支える自然・基盤 「地理的な物語」
<時間と空間の積み重ね>
見えない風景~時間でとらえる
-地図や写真で現在と過去の違いに着目する-
場所の昔の姿についての情報は、その場所の成り立ちや現在と過去の違いを理解するうえで重要な要素です。町村誌、空中写真、地図等を使って、「見えない風景」を時間をさかのぼって追いかけ、そのなかに見えている風景を子どもたちにに伝えていくことも「ふるさと探究」の重要な視点です。
<写真>
<地図・空中写真>
見えない風景~空間でとらえる
-安曇野の成り立ちの基盤となる要素に着目する-
北アルプスの山麓に位置する安曇野市の環境やくらしは、北アルプスの造山運動に由来して形成されきた岩盤の地質や、これらが風雨で長い年月をかけて削られて形成されてきた地形(主に扇状地)と深く関わりがあります。成り立ちや背景を探究する学習には欠かせない要素です。
地質 ~東西の違い~
糸魚川静岡構造線を挟んで東と西で地質年代も表層の土壌も異なる。
扇状地 ~地形と暮らし~
- 扇頂部:
- 縄文や古代の遺跡も確認されている沢水と山の恵みで古くから人が住み着いた場所
- 扇央部:
- 地下水がしみこみやすく、先人たちが堰をつくって開墾した場所
- 扇端部:
- わさびや養魚の生産を支える、地下水が湧き出る場所
堰 ~水を求めて~
「堰(せぎ)」とは網目状に広がる安曇野の農業用水路のこと。元来、水の得にくい扇央部で水田耕作などができるようになったのは、先人たちが開削した堰のおかげ。
<2種類の堰>
- 縦堰:
- 烏川や梓川を水源とし、等高線に対して直角方向に自然の流れを利用して導水した堰。
- 横堰:
- 梓川や奈良井川を水源とし、等高線に沿ってほぼ平行に導水した堰。